「海月姫」「東京タラレバ娘」など、数々の作品でヒットを飛ばす人気漫画家、東村アキコさんの青春時代の回顧録です。
漫画家になることを夢見て美術部に通う彼女は、ある絵画教室の先生と出会います。
厳しくも優しい、お節介で言葉足らずでぶっきらぼうで変わり者の先生のもと、毎日デッサンにデッサンを重ねる彼女。
そうして辛くも美大に合格した彼女を待っていたのは、それは甘美な「自由」でした。
学生の一人暮らしというものは、自由だ。
それは甘美で、反面、とてつもなく残酷。
遊びに、時間の浪費に歯止めが効かなくなって、人生の黄金の刻ともいえる時間が、手のひらからこぼれていった感覚・・・。
自分を磨かなかったこと、自分を大切に想ってくれる人を大切にしなかったこと・・・。
楽しい思い出の数々が今も眩しく輝いてるだけに、なおさら後悔は暗く深く、そして人生の節目節目で胸を締めつけるのです。
思い返せば少し恥ずかしくなる青春時代の無敵感、万能感。
素直になることがどうしてもできなかったあのときの気持ち。
全ては学生時代をとうに過ぎた人々の、心に残る後悔の念。
それらを痛いくらいに克明に描きだしていて、突き刺さる。胸が詰まる。
読むと、くっきりとあの頃の気持ちが甦ります。
後悔はある。あるけど、それを抱えて生きていくのだと、強く思う。